2015/01/12

東京現音計画@シルバーマウンテン

アメリカの実験音楽をテーマとした演奏会。個人的には、一柳慧「プラティヤハラ・イベント」がまた聴け(観られ)る!というところに興味があったり、ライリーの「in C」やるんだ!というあたりに興味があって、伺った。さすがにサクソフォン関係者っぽい方はお見かけしなかった。

【シルバーマウンテン連続公演 「東京現音計画」】
出演:有馬純寿(elc)、大石将紀(sax)、神田佳子(perc)、黒田亜樹(pf)、橋本晋哉(tuba)、洗足学園音楽大学「現代の音楽表現研究」履修生
日時:2015年1月11日(日曜)18:20開演
会場:シルバーマウンテン2Fグリーンルーム
プログラム:
ジョン・ケージ - ラジオ・ミュージック
トム・ジョンソン - カウンティング・デュエットI,II
サウンドペインティング(サウンドペインター:大石将紀)
トム・ジョンソン - カウンティング・デュエットIII, IV
一柳慧 - プラティヤハラ・イベント
トム・ジョンソン - カウンティング・デュエットV
テリー・ライリー - in C

到着したころには、すでに「ラジオ・ミュージック」が始まっており、シルバーマウンテンの2階ホワイエで演奏されていた。他の部屋より10分早い意味は、やっぱりホール備え付けのジャミングを避けるためだったのだろうか。

大石ゼミの履修生によって演奏された「サウンドペインティング」は、これはとっても面白かった!今日、村松氏がサクソフォンとして参加しており、ずっと前にサウンドペインターが出すサインの意味合いを説明したプリントを見せてもらったことがあるのだが、思った以上に細かく指示されるというか、制約が大きいのだ。かなりサウンドペインター(指揮者)の意図が反映されるため、曲の構成感はほぼサウンドペインターに掌握されており、その中でどのような即興が行われるか、また、複数の奏者が絡み合うときにどのような相互性が生まれるか、というところが聴きどころであった。それにしても、サウンドペインティングでは、数十に及ぶサインを覚えて、さらに指示に対して即時反応しなければならない。これは一朝一夕にはできず、かなり訓練が必要だろうなと思ったのだった。

「プラティヤハラ・イベント」は、大石ゼミの演奏を聴くのは2回目。今回は東京現音計画のメンバーも交えて、新たな境地を「体験」した。前回とはまた違った、アグレッシヴな"イベント"が次から次へと現れ(エセ手品をやる、サンドイッチを作る、風船で犬を作る、その風船を割る)、また、音としても面白いものが続いた。神田さんのパーカッションは、さすがだ!あのスピード感、オーラ。あと、大石さんは「ミステリアス・モーニングIII」の一節をアルトで!等々、面白ポイントを挙げていくとキリがない。

「in C」は、これは非常に長い作品だが、パルスを打つ打楽器のお二人が非常に良い仕事をしており、さらにその上で幾十にも折り重なる音の層が心地よかった。これだけ人数がいて、さらに筋金入りの音楽家も交えて演奏される「in C」…聴いて楽しいと思うと同時に、参加してみたい!とも思ったのだった。

ちなみに、トム・ジョンソンの「カウンティング・デュエット」が大きな曲の間に間奏曲のような形で演奏されたが、どうも面白さが良くわからず…(汗)初めて知った作品だったので、何度か聴けば印象も変わってくるのかもしれない。

"実験音楽"と名が付く演奏会を通して聴いたのは初めてだったかもしれないが、とても充実した時間を過ごしたのだった。こういった実験音楽だったり、ミニマル・ミュージックだったりを集めた演奏会、自分でも企画してみたいが、練習がとんでもないことになってしまいそうだ(笑)

「サウンドペインティング」「プラティヤハラ・イベント」「in C」では、多くの場合、そのベースもしくは重要な一要素となっているのは即興である。その即興における、「強い音」について興味がある。ここで私が言う「強い音」とは、多人数で即興を行っているときに、際立って聴衆の耳に届いたり、他の演奏者に対して即興の方向性を決定づけたりするような、単数または複数の音(あるいはフレーズといってもいいかもしれないが)のことである。以前、「プラティヤハラ・イベント」を聴いたときには、三味線の音を筆頭に、いくつかそのような音が出現した。また、今回も、たとえばサクソフォンの音、たとえばエレクトロニクスの音、例えば打楽器の音、など、そのような「強い音」がやはり出現していた。

では、ある音(ないしフレーズ)が、「強い音」となりえるためには、何が必要なのか?音量?音色?音高?コンテキスト?ごくわずかな音量しか持ちえないリコーダーのような楽器が発する音が、多人数を動かすような「強い音」となることはできるのか?突き詰めて調べていったら、面白そうなテーマである。

「ラジオ・ミュージック」が演奏された、ホワイエの様子。

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