2012/01/04

Duo Gaulin-Riverin: Brillance

昨年は、海外・国内ともに素晴らしいサクソフォンのCDが立て続けにリリースされ、購入も紹介も追いつかない状況だった。入手の段階からして、国内盤はそこそこ値がはるし海外盤は手に入れづらいしという困難、しかししかしこの機を逃すと次はないという悩みは、嬉しいような苦しいような。ちょっと前まではリリースされたものをすべてチェックできるような状況だったような気がするのだが、世界的な傾向としてやはりこの変化は必然なのだろうか。

そしてここ最近、入手する海外CDの平均クオリティが増加の一途をたどっている。フツーに考えたら嬉しいのだが、昔は「なんじゃこりゃー」というCDも結構あったため、そんな楽しみ(?)が無くなっているのは良いことなのか悪いことなのか。

昨年聴いた海外製のCDのうち、印象に残ったうちの一枚。「Duo Gaulin-Riverin: Brillance(ANALEKTA an29953)」。カナダ出身のサクソフォン奏者Mathieu Gaulinと、ピアニストJacynthe Riverinの共演で、クラシカル・サクソフォンのためのスタンダード・レパートリーを歌い上げる。全世界的に見ると、カナダという地は注目されていないようにも映るが、時々素晴らしいプレイヤーが出てきて驚くのだ。

J.マティシア(C.ロバ) - 悪魔のラグ
F.デクリュック - ソナタ
P.クレストン - ソナタ
W.オルブライト - ソナタ
I.ゴトコフスキー - ブリランス
R.ヴィードーフ - はかないワルツ
P.スウェルツ - クロノス

スタンダード・レパートリーの中でも、超高難易度のものばかり。このリストの中では、クレストンですら箸休め的に見えてしまう。演奏は(レコーディングだから、ということもあろうが)とにかく最初から最後までピンとした緊張感が通っており、ついつい聴き入ってしまうのだ。控えめなヴィブラートや細めの音色は現代的な傾向に通じるものであり、特に違和感はない。

技術的には、驚異的なレベルまで達している。国際コンクールの中継など観ていると、たまに人間離れしたテクニックを披露するプレイヤーがいるが、まさにその驚きがそのままCDに記録されている感じ。デュクリュックが一段階上の音域に飛んで驚き、オルブライトの"Invention"や"Mad Dance"のスピードに驚き、ゴトコフスキーの流れるようなドライブ感に驚き、クロノスの最終部の煽りに驚き…といった具合に、展開に息つく暇もない。ヘタにこのテクニックに追いつこうとすると、ヤケドしてしまいそう。

もちろん緩徐楽章でも素晴らしい歌い上げであり、例えばオルブライトの第2楽章など音色の美しさやピアノとのアンサンブル力、フレージング・センスなどが如実に表れるものだが、いやはや見事なものだ(ただ、クレストンの第2楽章で感じた違和感はなんだったのだろう…)。

クラシカル・サクソフォンらしい1枚として、多くの方に聴いて欲しい。Amazon.co.jpではダウンロード販売されているので、気になる方はそちらからチェックを。

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