2010/06/08

安井寛絵さんのリサイタルを聴いてきた

なんとか仕事を抜け出して伺ったが、案の定一曲目には間に合わず…(苦笑)。

【安井寛絵サクソフォーンリサイタル】
出演:安井寛絵(sax)、望月友美(mez-sop)、羽石道代(pf)、田野倉広向(electro)
日時:2010年6月8日(火曜)18:00開場 18:30開演
開場:ティアラこうとう 小ホール
プログラム:
田中カレン - ナイトバード
細川俊夫 - 暗い道
野平一郎 - 舵手の書
棚田文則 - ミステリアス・モーニングIII
A.ジョリヴェ - 幻想即興曲
A.カプレ - 伝説
E.デニゾフ - ソナタ

住吉駅から猛ダッシュして会場に到着。同じく一曲目に間に合わなかった(ナイトバードを聴けなかったのは残念!)mckenさんとともに、最前列に席を構えた。

初めてライヴで聴く細川俊夫から、ぐっと引き込まれる。実質的なデビュー・リサイタルという場で演奏家としての「地」を、ここまでストレートに聴衆へ届けることができるのは、ある種自信の表れでしょう。しかも、気合い先行ではなく、強固なベース(音色、テクニック、音楽性)を持つあたり、安井さんの個性のひとつと捉えられるかもしれない。

田中カレン、細川俊夫、野平一部、棚田文則というプログラムが第一部にならんだ作品展のようなセレクトは、実際にリサイタルで取り上げることには勇気が必要だったと想像する。だが、ここまで高レベルで吹かれてしまうと、安井寛絵さん⇔舵手の書とか、安井寛絵さん⇔ミステリアス・モーニングとか、プレイヤーと作品の一騎討ちのような印象を受ける。20代にして作品とバトルできる方って、なかなかいないのではないかなあとも思った。第一部は、鳥のさえずりを抱きながら夜が明けていた…(なんとコンセプチュアルな!ナイトバードを聴けなかったのが、ますます残念だ!)。

細川俊夫作品について、個人的な解釈を一点:
くらきより くらき道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の端(は)の月 - 和泉式部
歩けば歩くほどに、暗い暗い中に迷い込んでしまいそうだ。山の端の月よ、どうか行く先を照らしてくれ。ここでの「暗き道」とは、「煩悩の道」のことをも言っている。


後半は、とにかくデニゾフが圧巻。第一楽章を古典的な「ソナタ」として聴かせた演奏は初めて聴いたし(しかも、ありあまるほど楽譜に忠実!)、第三楽章のJazzyな愉悦感は、単に"さらっているだけ"の演奏とは一線を画したレベルにあったと思う。最近でこそいろいろな方が吹いている曲だけれど、自分の血肉としてレパートリー化している方は、少ないのではないかな。そういう意味で、今日のデニゾフの演奏を聴くことができて良かった!

相当さらっているのだろうなあ。アンコールまで聴衆に気を抜かせないだなんて、いやはや、聴く側としても一筋縄ではいかないですね。そこまで自分の内面を掘り下げて、聴き手をみなその穴の中に無理やり誘い込んでしまう演奏スタイルは、現代のサクソフォン界のなかでも稀なものなのかもしれない。ジョン・ハールとか、平野公崇とか、そのあたりの音楽家のコンセプトにも通じるのでは。

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会場は関係者だらけ。いろいろな方にご挨拶できて良かったー。特に、7年ぶり?となるモンマミチコさんにお会いできたのが収穫!帰りは、mckenさんと「軽く」一杯。音楽の話から、現代で一番大切と思われるようなことの話まで、いろいろと話せて楽しかったです。ありがとうございました!

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