2007/01/30

しばらくお休み

今週金曜日が卒業論文の提出日なので、ブログの更新を週末までお休みします。

最近の出来事…土曜日は、徹夜明けでプロムナードコンサートに参加。日曜日は、吹奏楽団のアンサンブルコンサートでたくさんの本番をこなした。月曜日は、モルゴーア・カルテットの定期演奏会を観に行って来た。

最近の新着CDは、ファビエン・ショウラキ Fabien Chourakiの「Paysaginaire」(Grab It!が入っている)や、モルゴーア・カルテットの定期演奏会の会場で販売していた「Destruction」など。

あ。前の記事で「届かない」と言っていたCDは、到着いたしました。

2007/01/26

CDが届かない!

去年の12/28に、amazon.frでCDを一枚注文した。いわゆる「ユーズド商品」で、フランス在住の出品者から買った。購入者の評価はポジティブ・フィードバックが97%で、「まあ大丈夫だろう」と安心しきっていたのだが…。

待てども待てども届かないのだ。今まで何回か、海外からCDやLP、楽譜を買ったり、送ってもらったりしているけれど、注文してから4週間も届かないのは初めての経験。普通はCDであれば、一週間ちょっとで届くものだと知っていたため、あまりの遅さにだんだん不安になり、もしやだまされたのかなあとか、月末のクレジットカード請求書を見てみようか、とか、ここ最近は気が気でなかった。

で、質問のメールを送ってみた。細かい文法の間違いは気にしなくて良いのです。「注文から4週間もたったのに届いていない」ということが伝われば。NOTは大文字にしてみた。

Hello. I confirmed ordering the item 2006/ 12/ 28. 4 WEEKS passed, But the item has NOT arrived yet. Have you dispatched the item yet?

すると、次の日に出品者から返信があり…ってフランス語かい!読めないって。

Bonjour, Je suis sincèrement désolé, votre commande a été oubliée. Je vous adresse le CD dès aujourd'hui en courrier prioritaire. Veuillez accepter toutes mes excuses et mes sincères salutations.

Google翻訳にかけてみると、…おお、読める読める。

Hello, I am sincerely afflicted, your order was forgotten. I address to you CD as of today in priority mail. Please accept all my excuses and my sincere greetings.

どうやら注文を受けたっきり忘れられて、プロセスが進んでいなかったようだ。address to you CD as of today in priority mail...とのことで、早速発送してくれた模様。ほっ。何はともあれ、ネット詐欺とか荷物の行方不明とかではなくて、良かった。

アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスなど海外の大国からの荷物は、よほどのことがない限り行方不明にならないようなのだ。もし、通販で届かないことがあれば、売り手から発送されていない可能性が高い、とも言えるだろう。

2007/01/25

ダニエル・ケンジー(Daniel Kientzy)賛

イギリスのクラシック・サクソフォーン界は、特に私の興味の対象であり、まとまった資料としてWeb上(http://www.geocities.jp/kuri_saxo/english/)にもまとめてある。そしてイギリスのサックスとともに、平行して興味を持っているのが、「サクソフォーンの現代作品」である。

その「現代作品」分野なのだが、これについて調べ物をしている段階で、必ずと言っていいほど出会う奏者がいる。それが、フランスを拠点に主にヨーロッパで活躍するサクソフォニスト、ダニエル・ケンジー。この記事では、彼の簡単な紹介と、功績を以下につらつらと。

ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏(1951 - )は、フランス生まれのサクソフォーン奏者。パリ・コンセルヴァトワールを卒業し、以後は主に演奏活動に専念。フランス国内外の作曲家から、多量の作品を献呈され&初演をするという、サクソフォーンの現代作品演奏のスペシャリスト。ソプラニーノ・サックスからコントラバス・サックスまでを縦横無尽にあやつる姿は、公式Webページ(→http://www.kientzy.org/)でも見ることができる(公式ページを開くと聴こえるエキゾチックなサックス2重奏の響きは、なんと2本のサックスを口にくわえて1人で演奏:BIPHONIEという奏法だそうで)。

まず驚くべきは、その献呈作品数。なんと、300(!)を超えるそうだ。さらに自主レーベル"NOVA MUSICA"への吹込みを中心とする録音にも積極的で、アナログ盤時代から通算で、現在72タイトルに達している。録音に積極的だったというあのマルセル・ミュールですら、ソロ+四重奏団のアルバムを合わせて50タイトルに満たないことを考えると、ケンジー氏の凄さが分かるというもの。しかもまだ増え続けているのだ。

それまであまりサクソフォンの作品を書くことに積極的でなかった作曲家が、ケンジー氏の演奏を聴いてインスピレーションを受け、作品を書く。そしてケンジー氏がその作品を初演、さらに再演を重ねてゆき、徐々に有名になってゆくという、好循環が生まれているのだそうだ。現代音楽の分野では、苦労して初演された作品が、もう二度と演奏されることはないことも珍しくないのだが…たった一人の演奏家に、「現代作品」分野の作曲家たちの、なんと大きな期待が込められているというのか。

2005年の暮れには初来日し、ディアナ・ロタル女史の「シャクティ(入野賞受賞作品)」を東京シンフォニエッタとともに初演した。「シャクティ」はサクソフォーン・フェスティバル2006ではメインプロとして取り上げられ、平野公崇氏が日本での再演を果たしたし、ケンジー氏の演奏によるCDも作成されているそうだ(入手至難)。この一連の流れを見るだけでも、ケンジー氏がいかにひとつひとつの作品を大事にし、そしてそのことが、どれだけサクソフォーンの世界に影響を及ぼしているのかが分かるだろう。

私が持っているケンジー氏のCDは、以下の4枚。
・Musiques contemporaines pour saxophones(ADDA)
・L'art du saxophone(NOVA MUSICA 5101)
・Une Couleur...(NOVA MUSICA 5108)
・HOT(NOVA MUSICA 5109)
いずれこのブログでもご紹介したい。…ちなみにWebサイト「mcken's wonderland(→http://www.iwakami.ne.jp/~mcken/)」管理人のmckenさんはどうやら20枚くらい持ってらっしゃるようです(^^;すごい。

ちなみに、手っ取り早くケンジー氏の演奏の凄さ、変態っぷり(もちろん褒め言葉です)を体感したい向きには、公式サイト内のビデオが楽しい。

・オーケストラとケンジー氏
http://www.kientzy.org/fr/videos/hq/1hq.html
オーケストラとバスサックスの協奏曲。「ドップラー協奏曲」だそうで。

http://www.kientzy.org/fr/videos/hq/2hq.html
ディアナ・ロタルの母、ドイナ・ロタルの作による、オーケストラを従えた協奏曲。サックスは倍音で跳躍したり、マウスピースはずしたり、二本同時に吹いたり、やりたい放題(笑)。二本同時&循環呼吸なんてできるんだ…。

・ケンジー氏ソロの映像作品「SAXISTE!」より抜粋
http://www.kientzy.org/fr/videos/hq/3hq.html
テープとサクソフォンのための「ド-ミ-シ-ラ-ド-レ」。優しい響きで始まるので、聴きやすい。

http://www.kientzy.org/fr/videos/hq/4hq.html
無伴奏バスサックスのための「Thema」。サックスの音らしい音が出てこないのだけれど…。

http://www.kientzy.org/fr/videos/hq/5hq.html
無伴奏テナーサックスのためのポール・メファノ「Periple」。右隅でタバコをふかしているケンジー氏、かっこよいですな。

http://www.kientzy.org/fr/videos/hq/6hq.html
エレクトロニクスとテナーサックスのための「Olos」。この不思議な躍動感は、エレクトロニクスを使った作品の独壇場でしょう。

http://www.kientzy.org/fr/videos/hq/7hq.html
エレクトロニクスとソプラニーノ(ソプラノ?)のための「Aulodie」。映像の合成がコミカルで面白い。

2007/01/21

グラズノフの録音

日本サクソフォーン協会のアンサンブル・コンクール一般の部の一次審査用に、録音をしてきた。グラズノフ「四重奏曲」の第3楽章。MP3にしてアップしてみた。

http://www.geocities.jp/kuri_saxo/notes/glazounov.mp3

うーん、ヘタクソでごめんなさい(笑)。曲の難しさに対して、技量が追いついていないですなあ…。ちなみに私はテナーだが、なんでこんなに音程悪いのかなあ(--;;;多分このファイルを提出することになるが、ツワモノぞろいの一般の部のことだし、どうなることやら。

叱咤激励、アドバイスなどは、コメント欄にどうぞ(--;大歓迎です。

2007/01/17

The Garden of Love

YouTubeは、最近サックス的興味からしても面白いムービーがアップされていて楽しい。いろいろ検索していたら、なんとヤコブ=テル・フェルドハウス Jacob ter Veldhuisの「The Garden of Love」を発見(笑)。ソプラノ・サクソフォンとテープのための作品で、「Grab It!」の躍動感をそのままに、全体を総天然色に染め上げたような、不思議な響きのする作品。脳みそに直接来るようなある種のアブナさも感じ…あー、これは聴き続けるとヤバイ。

曲想顔負けの真っ赤な衣装で演奏するのは、ボーンカンプの弟子でもある、ティエス・メレマ Ties Mellema氏(めちゃくちゃ上手い!)。ドイツのテレビ局の、放送用録画だそうな。どうやらメレマのマネージャーが、プロモーション目的でアップロードしたようで、つまりは演奏者公認。メレマのページ(→http://www.tiesmellema.nl/)からYouTubeへのリンクも張られていた。



(追記)
冒頭に読まれ、曲中にもサンプリングされて使われているのは、18~19世紀イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクの詩「The Garden of Love」。なかなかに美しく、読み応えがある。以下に全文を引用しておきます。

I went to the Garden of Love,
And saw what I never had seen:
A Chapel was built in the midst,
Where I used to play on the green.

And the gates of this Chapel were shut,
And "Thou shalt not" writ over the door;
So I turned to the Garden of Love,
That so many sweet flowers bore;

And I saw it was filled with graves,
And tombstones where flowers should be;
And Priests in black gowns were walking their rounds,
And binding with briers my joys and desires.

この詩について分析したサイトもあった(英文のみ→http://www.geocities.com/sir_john_eh/gardenlove.html

ポリシー

普段どんな音楽を聴いているかと聞かれれば、言ってしまえば主にクラシック・サックスだと言える。まあ学生の身分だし、CDに費やせるお金もそんなに無いので、幅広いジャンルを深く楽しむのは実質無理。そこで、基本的にはサックスものを集めながら、そこから関係ある音盤を、裾野が広がるようにポツポツ収集しよう…というのが、当面の音盤収集指針。

高校の頃デザンクロをアンコンでやることになって、そこで数種類CDを買って聴き比べたあたりから連鎖が始まったのかな。

例えば、今クロノス・カルテットの演奏で「紫の煙」を聴いているけれど、それはこんな連鎖だと思う。

デザンクロ -> トルヴェール・クヮルテット「Duke's Time」を聴く -> アトム・ハーツかっこいいなあ -> アトム・ハーツ・シリーズをいろいろ聴く -> モルゴーア・カルテットの「Destruction」 -> クロノス・カルテットという団体も、近いコンセプトのアルバムを作っているらしい -> クロノス・カルテットが有名になったきっかけは、ジミヘンの「紫の煙」のレコーディングによって、だそうな。

という感じ。おそらくこの次は、「紫の煙」のオリジナル・バージョンを探しに行くのだろう(笑)。この「連鎖をたどる」という行為に、クラシックを聴くことの一つの魅力を感じる。J-POPなんて一回CDが出たら終わりだけれど、繰り返し演奏されてこその意義だってあるんじゃないか。それは、同一演奏家、同一作曲家という繋がりをたどることができる、ということにも関わる部分があると思う。

もちろん、ジャンルは偏りがちになるけれど(実際それを自覚しながらこういう聴き方をしているけれど)、ハマると面白いです。

2007/01/16

練習の進捗状況

特に責任重大な3団体の練習の進捗状況は、こんな感じだろうか。

サックス四重奏:グラズノフ「四重奏曲」より第3楽章
安定はしてきたけれど、相変わらず難しいのなんの。グラズノフめ、なんとスキがないことか。週末は録音。

ピアノ四重奏:バーバー「思い出」
曲の聴きこみが足りない感じ。練習場所を使える時間が限られているのが痛い。来週の練習で何とかしよう。しかしホント、良い曲です。

吹奏楽(指揮):保科洋「風紋」
現役、OBともにたくさんの方に参加していただいて、ありがたいです。練習は2、3回程度と少ないので、パリッと鳴らして感動的に仕上がれば良し。

2007/01/15

フルモー四重奏団のライヴ盤@松本

ようやく入手。2002年にフルモー四重奏団が来日した際、長野県松本市のザ・ハーモニーホールで行われたリサイタルをまるごとライヴ収録したCD。数年前から存在だけは知っていたのだが、あまりの情報量の少なさにほとんど入手をあきらめていた(ザ・ハーモニーホールに問い合わせもしてみたが、的確な回答を得られなかった)。ところが、たまたまネット上で売られているのを見つけ、10ユーロ(1500円くらい?)と安かったこともあって手が伸びたのだ。

ザ・ハーモニーホールと言えば、地元でも屈指の響きを誇る室内楽ホール。実は出身地が近く、2002年のリサイタルも本当は聴きに行きたかったのだが、確か受験勉強の真っ最中で、ガマンしたような覚えがある。

ペラペラな紙のジャケットに入っていた。表面にはでかでかと「Fourmeau Saxophone Quartet フルモー・サクソフォン四重奏団 Live in Matsumoto」。裏面にはスポンサーであるVandoren、feeling musique Paris、Yamahaの刻印が確認できるが、レーベルは不明。あとはトラック・リストとメンバーのリストだけ。自主制作盤だろうか?

ヴィヴァルディ「序曲」
バッハ「G線上のアリア」
ヴィヴァルディ「協奏曲ト短調」
ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」
ラヴェル「ボレロ」
ピアソラ「タンティ・アンニ・プリマ」「リベルタンゴ」
プティ「ベニスの謝肉祭によるおかしな10の変奏曲」
ミュレーナ&コロンボ「インディファレンス」
ロシュ「ドゥギー・ジャズ」
コリア「スペイン」
ハメル「水晶玉」

普通に演奏してしまえばつまらないだけの何気ない曲目を、絶妙なアンサンブルと音色で聴かせてくれる団体って、実は世界を探してみてもずいぶん稀だろうなあ。(良い意味で)軽やかで、しかもスキのないテクニック。クラシックの小品がほとんどなのに、なんでこんなに楽しいんだろう?フルモー四重奏団天性の才能でしょうなあ。

アンコールではところどころ笑い声や拍手が入っていたりして、「何が起こっているんだー」と歯がゆくもあるが(笑)、ライヴ会場の雰囲気をおすそ分けしてもらった気がして、聴きながらちょっと嬉しくなってしまった。

2007/01/14

練習漬けの週末

1月の週末は練習の連続。サックス四重奏、ピアノ四重奏、サックスクワイア、吹奏楽、吹奏楽、吹奏楽、吹奏楽(指揮)…。頭も身体も疲れないのだけれど、なんだかこれだけ練習が続くと、精神的にぐったりしてくる。来週はセンター試験で大学内の練習施設が使えないのだが、それでもホール練習、公民館練習など。

卒業論文の締め切りも迫っているしなあ。本当は週末くらいゆっくり休みたいのだけれど、何かと忙しいです。

(追記:現在22:00)
管弦楽団のホルスト「第一組曲」の練習から帰ってきました。この練習のおかげで一気にリフレッシュ。うーん、楽しい。明日からも頑張ろう。

2007/01/13

小澤征爾×ロバーツ・トリオ×ガーシュウィン

小澤征爾って世界一有名な日本人指揮者ではないだろうか。ウィーン国立歌劇場やサイトウ・キネン・オーケストラにおいてタクトを取り、今なお精力的に活動を続けている。一方マーカス・ロバーツと言えば、ウィントン・マルサリスとの共演でも名高い盲目のジャズ・ピアニストであり、自身のトリオ活動も高い評価を得ていると聞く。まさか、この二者が共演した録音が存在するとは知らなかった。しかもよりによって、プログラムはガーシュウィン!

「パリのアメリカ人」「ラプソディ・イン・ブルー」「ピアノ協奏曲ヘ長調」なんかは、クラシックとジャズの見事な融合を示した、なんて評されたりする。しかしこの共演ではそれをさらに推し進め、マーカス・ロバーツ・トリオの面々をソリストに見立てた、一種のトリプル・コンチェルトの形態をしている。アレンジも加えられており、曲の要所要所でピアノ・トリオによる即興を含むソロが取られる。

…って、様子を書き並べてもなんのことやら、だと思うが、とにかくこれは一度聴いていただきたい!よく知った「ラプソディ・イン・ブルー」がもっと楽しくなるなんて!と驚くこと請け合いだ。オーケストラと絶妙なバランスでの演奏を繰り広げるジャズ・トリオは、何の不自然さもなく、むしろ単なるオーケストラアレンジよりも曲の魅力を引き出しているように感じる。音楽のジャンルを超えた交流が、特に顕著に成功しているようだ。「ピアノ協奏曲ヘ長調」の絶妙なアレンジ、第3楽章のすさまじいドライヴ感。小澤さんがノリノリで指揮を振っている様子が目に浮かぶ。

2005年には、長野県松本市でサイトウ・キネン・オーケストラと同一のプログラムをやったそうな。これは生で聴いてみたかった…。

ベルリン郊外ヴァルトビューネで行われたベルリン・フィル野外ライブのDVDが比較的入手しやすい他、サイトウ・キネン・オーケストラとのライヴ盤も出ている。ガーシュウィン好きの方はぜひ。

2007/01/11

続々と到着中

イギリスのサクソフォーン資料が、ここ最近続々と到着している。と言っても、ただのCDなのであるが、イギリスのクラシックサックス界を俯瞰できる面白いものばかりだ。eBayや中古品などを利用して、比較的安価に入手できているのも嬉しい。

ジョン・ハールのごく初期のCD「Habanera」、ラージアンサンブルのロンドン・サクソフォニック演奏による「an eye for difference」「Sax Pax for a Sax」、サイモン・ハラーム「alone...」、mckenさんや雲井雅人氏もWeb上でオススメしていたジェラルド・マクリスタル「meeting point」など…。どれもこれも、個性的かつレベルの高いアルバムで楽しい。

あと、クリスチャン・フォーシャウの「Renouncement(2007年4月発売予定だそうだ)」やロブ・バックランドが参加したEquivox Trioの「the time is now」も気になる。しかし、ここ一年のありえないほどのユーロ高&ポンド高がキツイ…。1年間で1ポンド200円->240円ってなんだ。

本業の卒業論文(大学4年生ですので、はい)や月末の発表会のための練習が忙しくて、ウェブサイトkuri_saxoの「イギリスのサクソフォン」コーナーを最近整備できないでいる。2月になったら、一気に更新する予定。時間があれば、奏者のディスコグラフィーだけでなく、主要レパートリーや作品リストの方も充実させたいなあ。

ペッテション「交響曲第16番」

なんだかものすごい曲に出会ってしまった。この音の洪水は、色彩感こそ違えどメシアンやザッパの曲に感じられるパワーと同じ印象を受ける。しかしなんだこの作品。

アーロノヴィッチ×ストックホルム交響楽団にフレデリック・ヘムケ Frederick Hemke氏がサクソフォーン独奏として参加したアラン・ペッテション「交響曲第16番」の録音。「交響曲」という言葉に、いったいどんな響きがするんだろうかと蓋を開けてみれば…最初から最後までサクソフォーンは休む間もない超絶技巧の嵐、その他の管弦楽器は断片的なフレーズを厚く重ねていくという単一楽章アレグロのの22分間。交響曲というよりは、まるでサクソフォーン協奏曲。

しかし、サクソフォーンがソロを務める交響曲を書くとは…いったいどんな考えがあって作曲に至ったのだろうか。Wikipediaの記述で確認する限りヘムケ氏の委嘱作品?とのことだが、真相は分からず。交響曲を一曲委嘱しました、なんてのもなかなか現実味がない話だしな…。

2007/01/09

an eye for a difference

イギリスのサクソフォーン、新着資料。今日出掛けに郵便ポストをのぞいたら、クリス・カルドウェル Chris Caldwell氏からCDが届いていた。真新しいものではないが、ロンドン・サクソフォニックの演奏によるサックス・ラージアンサンブルのCD「an eye for a difference(Tring 007)」。廃盤になっているらしくずっと探していたのだが、去年の暮れにカルドウェル氏にコンタクトを取ったところ、送ってもらえることになったものだ。感謝!m(_ _)m

ソプラニーノからバスまで総勢10名+ピアノ+エレキベースという、サックスのラージアンサンブルの変形版。ピアノとエレキベースを加えることで生み出される、普通のサックスラージアンサンブルにはない、エッジの効いた演奏が特徴的。

mckenさんのサイト(→http://www.iwakami.ne.jp/~mcken/sax/ss-londo.html)でメンバーが確認できるが、アポロ四重奏団やデルタ四重奏団のメンバーに加え、サイモン・ハラーム、ウィル・グレゴリーの名前まで見える。なんという豪華な顔触れ!イギリス・サックス界のスターが勢揃い。今では解散してしまった理由も、なんとなく分かる気がする。だってそもそも、これだけのメンバーが定期的に集まること自体、無理なことだと言うものではないか。

そんなロンドン・サクソフォニックが1998年にレコーディングを行ったマイケル・ナイマンの作品集がこの「an eye for a difference」。もう、一曲目の英国式庭園殺人事件「An Eye for Optical Theory 光学理論の眼識」からスピード感あふれる演奏にやられました。かっこ良すぎる!ナイマン・バンドの演奏でも聴いたことのあるこの曲が、サックスメインで演奏されるってなんだか嬉しいなあ(^^)実はこの曲ナイマンの作品の中でも、一番のお気に入りなのだ。続く「Queen of the Night」も、執拗に繰り返されるベース音によって完全にトリップ。かと思えば、弱奏での繊細な表現は、サックスの独壇場だとも感じる。いやあ、こいつはかなりの名盤だ!

収録曲は、An Eye for Optical Theory, Queen of the Night, Le palais royal, De l'hotel de la ville la concorde, And Do They Do, Here to There, Plotting for Shopkeeper, The Infinite Complexities of Christmas, Outside Looking In。

こうして聴いてみると、ミニマル・ミュージックとサックスの響きって相性が良いなあ。というか、そもそもこのラージアンサンブル自体ナイマン・バンドの響きを模して作られているのだから、そう感じるのはごく当たり前のことなのかもしれないけれど。

ラージアンアンブルのCDとして見たとき、確かにこのロンドン・サクソフォニック個性的な響きは人によって好みが分かれるかもしれない。だが個人的には、サックスが集まってクラシックを演奏するときの響きに比べると、このナイマン×ロンドンサクソフォニックの音楽には相当なインパクトを受けたことは確かだ。

2007/01/08

Habanera

Habaneraといっても、ハバネラ四重奏団のことではない。今日はちょっと珍しいCDをご紹介。イギリスのサクソフォーンの資料としてこの度入手したもので、ジョン・ハール John Harle(sax)とジョン・レネハン John Lenehan(pf)のデュオによるディスクだ。

ハール×レネハンの実質的デビュー盤というと、1987年2月にHyperionに吹き込まれた「John Harle's Saxophone」だろうか。ウッズやデニゾフの作品に加えてイギリスの作曲家でもあるベネット、ヒース、バークリーのオリジナルも収録したCDで、2004年にClarinet Classicsから再発売され、現在店頭で見かけることも多くなっている。

実はそのニヵ月後に、ハールはもう一枚のクラシック・サックスのアルバムをレコーディングしているのだ。Hannibalレーベルの作成によるこのアルバム、タイトルは「Habanera(Hannibal HNCD 1331)」という(内容を同じくしたLPも発売されておりそちらはHNBL 1331という型番が付いている)。収録曲目は以下のとおり。

ベラ・バルトーク「チーク地方の3つの民謡」
エリック・サティ「ジムノペディ第一番」
ジェレミー・ウォール「エレジー・フォー・トレーン」
ジョージ・ガーシュウィン「3つの前奏曲」
エイトル・ヴィラ=ロボス「ファンタジア」より第1楽章
レオナルド・ヴィンチ「アレグロ」
ペーター・デ・ロセ「ディープ・パープル」
リチャード=ロドニー・ベネット「"Tender is the Night"のテーマより」
ヨハン=セバスチャン・バッハ「ソナタト短調 BMV1020」
フランシス・プーランク「15の即興曲より第7番『エディス・ピアフへのオマージュ』」
クロード・ドビュッシー「シランクス」
モーリス・ラヴェル「ハバネラ」
デイヴ・ヒース「アウト・オブ・ザ・クール」

一見したところ、よくある「クラシックの名曲を集めてサックスで演奏してみました」的なアルバムだなあと思ったのだが、まさにそのとおり(笑)!このHannibalというレーベルは、どうやらロックやポップス系の音楽に強いレーベルだったらしく、封入されていたチラシには、エルヴィス・コステロやリチャード・トンプソンのアルバムがリストされているほど。どういう経緯でこのディスクが作られるに至ったのかは、今となっては知る由もないが、こんなジャンルにもハール×レネハンの演奏が残されていたことは幸いだった。

Hyperion(Clarinet Classics)レーベルで聴ける演奏よりも、さらにサックスという管楽器の「地」に近い音色は、人によってかなり好みが分かれるところだろう。特にソプラノサックスの音色の生々しいこと!バロックだろうが現代のオリジナル物だろうが、ここまでブロウしますか、というほど。言っちゃ悪いが細かい音符の音程は、かなり適当なのだが(息を吹き込みすぎて、アンブシュアが少し緩んで音程が下がるあの感じ)、長いフレーズを途絶えなく、一気にオーバー・ブロウで吹き切る様は、まさにハールのアイデンティティ!イギリスのサクソフォーン演奏の礎になるこの奏法は、ハマると相当の演奏効果を生み出すんだよなあ…。

アルバム最後に配置されたデイヴ・ヒースの「アウト・オブ・ザ・クール」はかなりの聴き物だろう。ソプラノサックスの曲としても名曲だとEMIから出版されている協奏曲アルバム「Saxophone Concertos」でも録音しているが、その演奏よりもさらにハールの強烈な気迫が感じられる。ピアノの打鍵のアグレッシヴなこと!バッハのソナタト短調の演奏は、あたかも曲が即興的に生み出されているような不思議な感覚。そのうちhttp://www.geocities.jp/kuri_saxo/english/にも書きます。

発売からすでに20年が経過しようと言うだけあって、さすがにCDショップの棚に並んでいるのを見ることはないと思うのだが、eBayなどで「habanera harle」と検索すればCDやLPの新品、中古品がゴロゴロ出てくる(発売当時けっこう売れたんだろう)。興味ある方は買ってみて下さい。

クリスチャン・ロバ Christian Lauba「Hard」

クリスチャン・ロバ Christian Lauba氏は1952年生まれのフランス人作曲家。彼は最初ヨーロッパの語学を学んでいたが、大学在学中に作曲に目覚め、ボルドー音楽院で作曲をMichel Fuste-Lambezat、ピアノをSuzanne Martyに師事した。その後、1984年ボルドー市SACEM賞、1994年ベルリン市作曲コンクール1位を各々受賞、作曲家としての地位を確立する。ロバの作品の多くを占めているのがサクソフォンのために書かれたものでこの曲以外にも「9つのエチュード」が有名。

この曲はフランス人サクソフォン奏者のジャン=ミシェル・グーリー Jean-Michel Goury氏のために書かれたテナーサックスのための無伴奏ソロ曲。初演は1988年の東京サクソフォン・コングレスで同じくグーリー氏によって行われた。

高度なテクニックを要する、10分近くにも及ぶ大曲である。ジャズやロックのエッセンスがふんだんに使われているせいか、現代の無伴奏曲にありがちな理解のしにくさはあまり感じられない。ジャズやロックに親しんだことのある人ならおそらく、どっぷりとこの曲の世界につかれるのではないだろうか。特殊奏法を駆使しながら最初から最後まで様々なパッセージが現れては消えを繰り返し、エンディングまで一気に駆け抜けていってしまう。

録音はいくつか存在するが、特にアルバム「reed my mind(BVHAAST CD 9304)」で聴けるアルノ・ボーンカンプ Arno Bornkamp氏の演奏はあまりの集中力の高さに驚かされる。いったん聴きはじめると否応なしに聴き手を曲の世界に引きずり込み、集中力を決して途切れさせることなく、最後の最後まで聴き手を放さない。こんなに集中力が高いものだから聴き手もそれに対抗して精神集中の状態で聴くため、1回聴き終わると疲れてしまう(いやホントに)。演奏者自身も相当疲れているんだろうけど。演奏の様子を生で観てみたいくらいだ。最近来日したという話を聞かないのだがぜひまた日本に来てほしいものである。

2007/01/07

吹き初め

昨日、今日と今年の吹き初め。最後に吹いたのが去年の12月28日だから、まるまる一週間以上楽器に触れていなかったのか。その間もなんとなくイメージを作ったり、CDを聴いたりして過ごしていたとはいえ、やっぱりいざ吹くとなると違うもので。リードの悪さも相まって、鳴らすのにかなり苦労してしまった。

昨日は、サックス四重奏の練習を軽く2時間。バリトンが体調不良のためお休み。久しぶりの合わせで、テンポのぶれがあちこちに出てきた(^^;今日は、ピアノ四重奏、サックス四重奏、吹奏楽。サックス・クワイアの練習にも出たかったのだが、研究室のほうが忙しくて顔を出せなかった。

去年は、年末年始の休み後にアンブシュアを忘れて噛み過ぎるようになってしまい、結局一からアンブシュアを作り直したんだっけな。今年はどうなることやら。

2007/01/06

フランスのコンクール事情

サックス大国フランスは、世界的に見ても とりわけサクソフォンのコンクールが多い地域だ。数々のジュニアコンクール、また、プロのためのコンクールとしては、UFAMやサクシアーナ、アドルフサックスといったコンクールの名前を日本でもたびたび耳にすることがある。ディナンのアドルフ・サックス国際コンクールだって、開催地がベルギーなだけで、蓋を開けてみればフランス・アカデミズムに則った内容だし…。

特に、比較的若い(15歳以下)サクソフォニストのためのコンクールが数多く存在することが興味深い。ざっと挙げてみるだけで、ギャップ・ジュニア・コンクール、UFAMコンクールのジュニア部門、アドルフ・サックス国際コンクール(ディナンとはまた別物)のジュニア部門…などなど。義務教育とは別に設けられた「音楽院」という制度のためか、若いうちから充実した音楽教育を受けられることにも関係があるのだろう。

フェスティバルの時にジェローム・ラランにもらったこのCD、フランス・サクソフォーン協会製作になるこのディスク「STARSAX 2003 2004(A.SAX)」は、近年行われたコンクールの概観を、一気に俯瞰できる内容。すなわちジュリアン・プティやジェローム・ララン、大石将紀といった20代後半の新進プレイヤーから、10歳前後(!)の子供までの演奏を収録しているのだ。しかも、全ソリストがLaureat du concours…コンクール入賞経験あり、という前書き付きの奏者だという。

ライナーには、一曲一曲のフランス語解説と、トラックの演奏者の名前、また、演奏者がどのコンクールに入賞した経歴を持つか…といったデータまで掲載されていた。ふむふむ、フランスのコンクール事情を知る上で貴重な資料である。ジュニアからシニアまで、各所のコンクール入賞者の音をまとめて聴けるというのは、なかなか凄いではないか。

演奏形態は、ピアノとのデュオ、三重奏、四重奏、テープ伴奏、吹奏楽との演奏、と多岐にわたり、曲目も、プッチーニや民謡の編曲、カプレやミヨーのオリジナル、さらにエリオットー・カーター、ファビアン・レヴィ、ティエリー・エスケシュ、フランス・サクソフォーン協会の委嘱作品までと様々。

さすがに20組以上のソリストや団体が参加しているだけあって、収録されているのはほとんどが小品だが、例えばジュリアン・プティ氏の演奏による「The Summons」、ジェローム・ラランや大石将紀氏も参加したカーターの「Canonic Suite」、テナーにミハ・ロギーナが参加しているタレア四重奏団 の演奏によるエスケシュ「Le bal」なんかは、資料としての価値を超えてかなり聴き応えがあるなあ。

10歳と12歳のデュオや、15歳以下のみで演奏された四重奏やトリオなんてのもあり、意外なほどの安定感に驚いたのだが、どうやらアーティスティック・アドバイザーとしてニコラ・プロスト氏がバックアップを行ったらしい。

2007/01/05

サクソフォーンフェスティバル2006レポート

もう昨年のことになってしまったが、12/24のサクソフォーンフェスティバル2006で、自分が聴いた部分のレポート(?)を書いておこう。今年は2日間に亘る開催とのことで、本当は全部通して聴きたいくらいだったのだが…あいにく自分の予定と重なり、2日目の午後から15:30くらいから聴いた。しつこく一つ一つ書き連ねます。

・アンサンブルコンクール最高位受賞団体披露演奏
アンサンブル・リヴィエール - ドビュッシー「弦楽四重奏曲ト短調」より第一楽章

到着して一番最初に聴いたプログラム。去年は確か小ホールでの披露演奏だったはずだが、今年は大ホールでの披露演奏だった。女性四人のグループ、音大出の方々だろうか?肝心の演奏は音場が遠くてちょいとパワー不足な感じだったが、自然体の演奏。発音や音色にグランプリの貫禄を見た気がする。


・第9回ジュニアサクソフォーンコンクール最高位受賞者披露演奏
福間修人 - グラズノフ「サクソフォーン協奏曲」

この披露演奏も、去年までは小ホール開催だったはず。高校3年生とのことだが、若さに似つかぬ美しい音色と、堂々としたステージには、演奏後に大きな拍手が送られた。さすがに高速なパッセージになると苦しかったかな、まあそれは今後に期待だろう。このコンクールから若手の名手が多く輩出されているとのこと、そのうち福間さんの名前をメディアで見るようになるかもしれない。


・サクソフォーン協会A会員によるコンサート
パンフレットにはプログラムの詳細が載らないけれど、毎年名演が多い「A会員コンサート」。今年も様々なスタイルの演奏が楽しめた。あわよくば、楽曲の解説などつけてくれると良いと思うのだが。
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クローバー・サクソフォン・クヮルテット - デザンクロ「四重奏曲」

まさに次世代の四重奏団!極小のppから無理のないffまでのダイナミクス、ビロードのような美しい音色、良く練られたアンサンブルなど、先日聴いたハバネラを思わせるようなサウンドだった。入賞暦も華々しい日本の若手が終結しただけあって、本当に素晴らしい演奏だった。聴きなれたデザンクロだったが、弱音でのニュアンスのコントロールを堪能できるのはライヴならでは。林田氏のソプラノのコントロールには、正直恐れ入りました…。未来の日本を背負う四重奏団として、期待特大。5月のリサイタルも待ち遠しい。
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ジェローム・ララン&原博巳 - ロバ「アルス」、鈴木純明「アンチエンヌ」

7月の「サクソフォーン旋風」以来、再度聴く機会を心待ちにしていたデュオ。これが世界レベルの二重奏ですよと言わんばかりの、絶大なインパクトをもつ演奏。時に一体化し、時に互いに火花を散らす、絶妙なコミュニケーションが、音を通して伝わってきた。そういえば、ソプラノ・サックスのデュオをまとめて聴く機会って珍しいですね。
クリスチャン・ロバ「アルス」は、プロレベルでもっと演奏機会が増えても良い曲だと思っていたが、この2人の演奏で生で堪能できたのは僥倖だった。しつこく繰り返される4度と5度のハモリに、徐々にトリップさせられていく。鈴木純明氏の「アンチエンヌ」は7月にも聴いた。ちょっとこなれてきたためか、曲の持つ新たな側面が、見えそうで、まだ見えないような…。頻繁に聴く曲でもないので、また感想を改めたいところ。デュオでCD作ってくれませんかね(笑)。
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高畑次郎 - モロスコ「ブルー・カプリス」

パルテノン多摩の大ホールにサックス一本というのは、さすがに音量やインパクトの面で希薄な印象を与えかねないとも思うのだが、見事な演奏だった。ジャズの無伴奏カデンツァを思わせるこの曲、アメリカでは既にスタンダードなレパートリーに位置づけられており、レコーディングも多い。サックスの高畑氏は大阪市音楽団の奏者としても有名。そういえば、オーティス・マーフィ氏との親交があるとのことだが、同じ門下と言うわけではないのに音色の面で共通点を感じたのは偶然だろうか。
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有村純親(sax)、松浦真沙(pf) - ヒンデミット「ソナタ」

あのニコラ・プロスト氏がプロデュースする、サクシアーナ国際コンクールで、昨年見事優勝を果たした有村氏。こういった新進気鋭の奏者の演奏を聴くことができるのも、フェスティバルの魅力の一つだと思う。演奏曲目はてっきり「アルトホルン・ソナタ」だと思っていたのだが、「ヴィオラ・ソナタ」だった。平野公崇氏の「クラシカ」での印象も強い本曲であるが、平野氏の演奏とは対極にあるような、全音域に渡るニュートラルな音色が印象的。テクニックも大変安定している。ほかの編曲物も聴いてみたい…バッハとか、けっこう似合いそうな気がする。
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大城正司(sax)、成田徹(sax)、沼田良子(pf) - ラヴェル「スペイン狂詩曲」より

Trio-SHIZUKUという1994年に結成されたピアノトリオだそうで、2004年にはオペラシティでリサイタルもやっていたそうな。知らなかった。サックスの大城氏と成田氏は、なんとソプラノ、アルト、テナーを持ち替え…つまりステージ上にはサックスが6本!壮観なり。金井宏光氏による編曲、さらに演奏も素晴らしかったが、さすがに計6本の必然性は感じられなかったなあ(^^;チューニングも大変そうだった。


・フェスティバルコンサート~サクソフォンと室内アンサンブルによる作品
オーケストラは、板倉康明指揮東京シンフォニエッタ。シェーンベルク「室内交響曲」の編成を基点とする室内楽団だそうで、基本的に弦、管ともども1パート1人。室内オーケストラを従えた催しとは…近年まれに見る豪華なもので、思わず聴き入ってしまった。解説は、昨年と同様、上田卓氏。
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宗貞啓二(sax) - アンドレ・カプレ「伝説」

1903年に生まれたカプレの本作品を、様式を踏まえたうえでこれだけ重厚なイメージで聴かせられる人って、なかなかいない気がする。どこまでつづくんだおい、というほどの息の長いフレーズ、そして決してオーケストラに屈しない確固たる響きなど、宗貞氏の面目躍如という感じ。昨年聴いたデュオ宗貞を思い出した。オーケストラの方は、意外と地味な響きがしていたが、これは曲のせいだろう。
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西本淳(sax) - マリウス・コンスタン「演奏会の音楽」

オーケストラによる演奏は、日本初演だそうで。確かにピアノとの二重奏では、コンサートピースとして取り上げられるのも納得できる気がするが、オーケストラとの演奏はピアノのそれと比べると…。響きが色彩感豊かになる分、ちょっととっつきづらいと言うか(笑)。個人的には、ピアノとのデュオのほうが好きかな。
サクソフォーンだけでなく、オーケストラ共々かなりの技巧を要しているように見えたが、そこはさすが東京シンフォニエッタ。サックスの西本氏は、ノナカ・サクソフォン・コンクールでの優勝履歴があり、音を聴いてみたかった奏者の一人。オーケストラの人数が増えたぶん、音は埋もれがちになるけれど、いやー、上手かった。
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林田祐和(sax) - フランコ・ドナトーニ「HOT」

ピアノ、パーカッション、コントラバス、トランペット、トロンボーン、クラリネット、サックス(ソプラニーノ&テナー)という、「あんたそれジャズバンドでしょ」という編成。どんな響きがするかとワクワクしていたが、出てくる音は疾走感あふれるフリージャズのよう。ものすごくカッコイイ!この曲、ダニエル・ケンジー氏によるCDもあるそうで、ぜひ聴いてみたいが…(入手困難)。
終始音楽の主導権を握っていたサクソフォーンの林田氏も見事だったが、特に超高速なコード・プログレッションを鮮やかに駆け抜けてみせたコントラバス奏者に、特に拍手を送りたい。もちろん、各所で的確な相槌を打つピアノと、難度の高いマレット系パーカッションを繰ったパーカッショニスト、そして、サックスとのバトルで火花を散らした管楽器プレイヤー達にも。
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平野公崇(sax) - ディアナ・ロタル「シャクティ」

インド哲学的に言えば、「シャクティ」とは宇宙のエネルギー、潜在的能力、のようなイメージで使われる単語なんだそうだ。ソプラニーノ&アルト&バリトン持ち替え。マウスピースを外した冒頭のFLAUTO奏法でのフレーズが奏でられた瞬間に、空気が変わった。続いてソプラニーノによる圧巻のスケルツァンド。さらにバリトンの重厚なフレーズに、最後はアルトサックスでのオーケストラも交えた爆発的なフィナーレが続く。23歳の女の子が書いた曲だとは、とうてい思えない!平野氏の演奏は今までに何度か聴く機会があったが、やはり覇気、存在感という点では、圧倒的に他の奏者の追随を許さないと思う。
2005年12月にダニエル・ケンジー氏が初来日したのは、この曲を東京シンフォニエッタと初演するためだったはず。その時は聴くことができなくて歯がゆい思いをしたが、ついに聴く機会が巡ってきて大変に嬉しかった。誰かレコーディングしませんか?
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小串俊寿(sax) - ダリウス・ミヨー「世界の創造」

小串氏の音を生で聴いたのは初めて。噂に違わぬどこまでも美しい音色!冒頭のユニゾンを聞いた瞬間に、バーンスタイン盤のエコーが聴こえた、ような気もする。オーケストラのパートは、さすがに難易度が高いだけあって、ところどころにキズも見られたが、そんな中ゆるぎない美音を聴かせ続けた小串氏。トリを飾るにふさわしい、充実した演奏だった。


・フェスティバルオーケストラ2006
伊藤康英「地球はおどる」、ベラ・バルトーク「管弦楽のための協奏曲」より第5楽章

今年はなんと、コントラバス・サクソフォーン入り!でかい!ベルの中に、赤ちゃんくらいならば入っちゃいそう。そういえば、一昨年はサリュソフォーンが入っていたっけ…。どこから持ってくるんだろう。
毎年新作が披露される伊藤康英先生の作品は、ホルスト「木星」のメロディを中核のテーマとして、世界中の舞踏音楽のフォーマットに当てはめていく、なんとも楽しい作品。ブルガリア民謡のリズム、アリラン、安里野ユンタなどが、目まぐるしく出現しては解体してゆく…阿波踊りのリズムが出現したときには、思わず笑ってしまった。
バルトークの演奏は、さすがフェスティバル・オーケストラ。圧倒的!オーケストラのような多彩な色彩感は望むべくもないが、サクソフォーンによる演奏は、新たな魅力を紡ぎ出しているようにも思えた。全体をそつなくまとめ、上手にドライヴさせる池上氏の指揮も見事。


・サックス大合奏2006
伊藤康英「ファンファーレ21」、エドワード・エルガー「威風堂々」、ベートーヴェン「歓喜の歌」

池上氏によるカッコイイ!挨拶に続いて、グランド・フィナーレの大合奏。ホール全体をサックスの響きが覆いつくす様は、今まで経験したことのないような豪勢な響きだ。楽器もって来れば良かった(泣)。
フェスティバル自体は、2003年から連続して聴きに来ているが、実は今まで大合奏まで残って聴いていたことはなかった。なんせ夜遅く、ずーっと長時間に及ぶコンサートを聴き続け、疲れて大合奏の前に退出してしまうことばかりだったのだ。しかし、聴いて良かった!まさに2006年の締めくくりにふさわしい!


…こんな感じで、何も考えず書き綴ってみました(笑)。この充実したコンサートを実現するに当たり尽力した、演奏者、運営者の皆さんに、感謝を表したい。さて、来年も土日の二日間開催だそうで、今から楽しみ。ぜひ今度は、全プログラム制覇を目標に。

2007/01/04

マズランカのサックス作品集

雲井雅人氏の「Simple Songs(Cafua CACG-0093)」を昨年末に買って以来、ディヴィッド・マズランカ David Maslanka氏の「ソナタ」を特に意識的に聴きこんでいる。30分に及ぶ長大な作品というだけあって、今まではどうも集中して聴きとおすこともなかったのだが、きちんと何度も聴いていくと楽曲の構造が徐々に身体に染み付いて、最後まで聴くのも容易になるようだ。

演奏側が作曲者に要求されることが増えれば増えるほど、聴き手側も真剣に耳を傾けざるを得ないというものだ。特にこの「ソナタ」は、マズランカ氏の表現したいことがこれでもかというほど詰め込んであり、聴き手を捉えて離さない強い意志が感じられる。…イダ・ゴトコフスキーの手による、強烈な感情を表した作品(ブリランスや四重奏曲など)に共通点を感じるのは私だけだろうか。

さてそんな折、実家からつくばに戻る最中に寄った石丸電気で、スティーヴン・ジョードハイム Steven Jordheim氏演奏によるマズランカサックス作品集「Maslanka / Song Book for Saxophone(Albany TROY 392)」を発見した。2000円ほどだということもあり、あっさりと購入。アルトサクソフォンとマリンバのための「ソング・ブック」、そして「ソナタ」が収録されている。

サックスのジョードハイム氏は、実は雲井さんとジュネーヴ国際音楽コンクールの入賞を分け合ったプレイヤーだ。現在は、ローレンス大学音楽院サクソフォーン科の教授職にあるという。アメリカではかなりの実力派プレイヤーなのだろうか、録音はピンボケ気味ながら演奏はかなり良い。

「ソング・ブック」が収録されているのが目新しい。マリンバとアルトサクソフォンという、現代楽器の組み合わせによる、7つの短い曲から成立した組曲。一貫して感じられるのは、マズランカ氏のバッハへの愛情だ。バッハのコラールを1パートずつ歌うことを日課にしているというマズランカ氏だが、激しいフレーズの中にも、抑制された美しさが感じられるのは、そういった理由からなのだろう。

これまで「ソナタ」「ソング・ブック」「マウンテン・ロード」などマズランカ氏の作品をいくつか耳にしてきた。どの作品も、サクソフォーンというフォーマットを使いながら、自身の言葉を最大限に表現しきっているものばかり。作品を聴くだけで、作曲者の「独白」が生々しく感じられる作品って、実は意外と稀有だったりするのではないか?氏の作品が知られるにつれ、特に演奏者サイドに徐々に人気を博している理由も、わかるような気がする。

2007/01/03

デファイエの「古城」

Adolphesax.comをつらつら観ていたら、マルティノン(訂正:クリュイタンスです;;)指揮フランス国立放送管弦楽団の演奏によるムソルグスキー/ラヴェル編「展覧会の絵より『古城』」の動画を発見。最後がちょっと切れているのが残念…。

デファイエ若い!映像から確認できるが、いわゆる「ネジひとつで開きが変えられるメタル・マウスピース」を使っている頃だと思われる。綺麗な音色、長いフレーズ…。

YouTubeにアップロードされている動画なので、記事内に組み込み。数行のソースを貼り付けるだけでいいとは便利だなあ。巷で話題のYouTubeだが、このムービー、著作権的な扱いはどうなるんだろうか。しかしそもそも出所だって不明なのだし(どうどうめぐり)。ま、何か問題があったらリンクを消します。

2007/01/01

明けました2007

明けましておめでとうございますm(_ _)m皆様、どうぞ本年もよろしくお願いいたします。

実家に持って帰ってきているCDは、
・雲井雅人「Simple Songs」
・オムニバス盤「STARSAX」
・ジャン=ドゥニ・ミシャ「Mendelssohn, Grieg」
…本当は、レビューするために持ってきたのだが。雲井雅人氏のアルバムは、本当に凄い!

あと、なぜか実家にある、
・ハバネラ四重奏団「Grieg, Glazounov, Dvorak」
でグラズノフのイメージを勉強中。

これらをエンドレスで聴きながら、ハリー・ポッターを読むという、なんだかワケのワカらない正月。